第1回日本医療用光カード研究会論文集、21-22、1990年 [パネルディスカッション2]
WORM型 光カード用
リード・ライト・デバイスの規格統一上の問題
中島義夫 オリンパス光学工業株式会社 CS-PJ
はじめに
ここで扱う光カードとはクレジットカードと同じ大きさ、厚さのカードで光を用いてデジタル情報の読み出し書き込みを行うものを言う。
また、WORM型と言い同一位置には一度だけ書き込む事が出来、読み出しは多数回出来るものを使用する。
このWORM型光カードに、誤り訂正データを付加したデータを書き込み、書き込まれたデータを正しいデータに訂正し読み出す装置が光カードリーダライタである。
一方、ISO/IEC JTC1/SC17のWG9で光カードの物理特性と物理フォーマットに関する規格化が進められている。国内のWG9のTFにおいて物理フォーマットの検討がなされているが、4社より各々の物理フォーマットが提案されている状況である。
上記を前提とし、光カードリーダライタの規格統一に関し、私見を述べる。1.光カードリーダライタの規格の範囲
光カードのシステムに於ける規格または標準と言ったものには、図1に示す如くシステムの各段階に於けるものが考えられる。
図1
[1]光カード媒体での規格
[2]光カード媒体と光リーダライタ間での規格
[3]光リーダライタとコンピュータ(パーソナルコンピュータ)のインターフェースに関する規格
[4]BIOS及びユーティリティとアプリケーションプログラムとの間での規格
[5]アプリケーションに於ける規格
[6]異なるアプリケーション間での規格
これ等のなかで[5]は対象アプリケーション分野に於ける共通のもの、例えばファイルされるデータの順番やコード等の書き方といった論理フォーマットに関するものであり、また[6]は複数のアプリケーション分野のものが相乗りする場合の決め事、例えば個人のID情報等の共通データの扱いや相乗りしているアプリケーションが何でどのエリアを使用しているか等の情報の持ち方と言ったものとなる。
従って、[5][6]は対象外となり[1]から[4]の段階の規格が一応の光カードリーダライタに関する規格の範囲と考える。但し、[1]から[4]全てをリーダライタの装置メーカーが責を負おうと言うのは困難であり、コンピュータメーカーやソフトハウスの協力無くしては成り立たないと考える。2.光カード媒体での規格
光カード媒体での規格は、光カードリーダライタがどの様な性質の物を扱うのかを決める事となり、下記の項目等を規定するものである。
[1]カードの構造、材料及び寸法を含む物理特性
[2]光記録領域の特性(記録・再生の光学条件、反射率、コントラスト、感度特性、C/N、屈折率、欠陥サイズ等)
これ等はWG9でPart 1からPart 3として審議がされている。
問題は、光カードリーダライタの負担をいかに小さくとどめるかと共に価格を低価格に維持できる線を見い出す事と、光記録媒体の内光カードに使用する媒体としてどこまで(例えば反射率の異なるもの等)のものを入れるかといった事である。3.光カード媒体と光リーダライタ間での規格
光カード媒体と光カードリーダライタ間の規格の主なものは、光カード媒体上に於ける物理フォーマットである。これは光カード媒体上にどの様な形態で記録するか、また記録されているかを定め、複数の装置メーカーの光カードリーダライタ間の互換性を図る上での最重要項目である。
規格は、下記の項目等を規定するものである。
[1]記録・再生に使用する領域
[2]トラックの構成及び本数
[3]トラックIDの持ち方とID情報の記録方法
[4]データの記録方法(変調方式、ビットサイズ、最小ビットピッチ、データの並び方等)
[5]データフォーマット(トラックフォーマット、セクタフォーマット等)
[6]誤り訂正符号
上記項目は、各項目が関連しあっている為、1セットとしてとらえる必要がある。
これら項目は、WG9のPart 4として審議されている。
問題は、カードメーカーと装置メーカーに関するものと、装置メーカーとアプリケーションを作るシステムメーカーまでを含んだものとが考えられる。
前者の問題としては、[4]のデータ記録方法に関するものがある。これは、特にエッジポジション記録(マーク長記録)か、ピットポジション記録(マーク間記録)かといったもので両者言い分があるが、なんと言っても媒体の性質によるところが大きなものである。この事によって選択される変調方式までが変わる事になる。
後者の問題としては、[3][5]が大きいものとしてある。
[3]はIDの持ち方により、目的トラックを見いだすシークアクセスタイムとシークエラーになる確率とに関する事柄と、トラックのフォーマット効率との間での取り分の妥当性を理論上と実用上の両面から検証する必要がある。
[4]は1本のトラック上にどの程度のバイト数を設けるか、また何セクタにするかと言ったものを技術的制限の下に定める必要がある。1回に大量のデータの読み書きを行うのであれば1トラック1セクタとして1トラックのデータ量をできるだけ多くすべきであり、一方1回の書き込みは小さなデータ量であるが、読み出しの時に多数回のデータを参照するという場合には、1トラックのデータ量は犠牲にしても1トラックに何回分かのデータが持てるように小さなセクタを複数個持つのが良いと考えられる。この場合に対し、どの様な種類のセクタサイズ(セクタ数)のフォーマットを用意すれば良いかアプリケーションの試行による検証が必要になると考える。また他の観点から、コンピュータに接続されるデータファイル媒体としてはセクタサイズは2のべき乗にするのが望ましいと考える。この点も実用上からの検証が必要と考える。いずれにしても現状の光カードリーダライタは読み出し書き込みの為にカードの往復運動を行っている。従って、アプリケーションに於て、いかに光カードリーダライタの機械的動きを軽減させることが出来るデータフォーマットに出来るかといった観点で捉える事が重要と考える。4.光リーダライタとコンピュータ(パーソナルコンピュータ)のインターフェースに関する規格
ハードウエアインターフェースに関するものと、光カードリーダライタに対するコマンドの統一と言ったソフトインターフェースに関するものがある。
ハードウエアインターフェースは使用するコンピュータの種類によらずに決められるのが望ましく、その意味では一般的なものが良いがシリアルインターフェースではあまりにも遅いので、光ディスク等で使用されているSCSI(将来的にはSCSI-IIか?)の方向になって行くと思われる。
コマンドに関しては、使用するホストアダプタによるが、始めは光カードリーダライタの装置メーカーが用意しているBIOSを出して行く事になると思われるが、アプリケーションを使用する側での便を考えるとこのコマンドに関しても統一が図られ、同一のBIOSで動作させられる方向に向かうと考えられる。が、その為には強力なイニシャチブを取って行くところがでてこないとなかなか進みにくい問題がある。5.BIOS及びユーティリティとアプリケーションプログラムとの間での規格
アプリケーション側から見ると、フロッピーやハードディスクのファイルと同様のデータの読み書きができるのがベストとなる。しかし、これ等はリライタブルの媒体で発達した技術であり、ライトワンスの媒体にそぐわない面がある。従って、ユーティリティとしてどの様なものを用意するかがアプリケーションを容易に作成できる決め手になると考えられる。また、ユーティリティを作成する者にとってはBIOSへコールする仕方は各社共通である必要がある。これ等に関しても特にアプリケーション側からの強力な働きかけがないとなかなか進みにくい問題がある。
6.まとめ
2,3項はWG9で検討されているが、4,5項は未着手である。光カードの発展の為には、今後これ等項目に対し力を入れて行く必要があると考える。