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第1回日本医療用光カード研究会論文集、27-28、1990年

[パネルディスカッション5]

リード・ライト・デバイスの規格統一について

野田和男
(株)日本コンラックス 開発部

1.まえがき

 光カードとはクレジットカードや銀行カードなどの磁気カードと同じ大きさ(85.7mm×54mm)、厚さ(0.76mm)のプラスチック製カードで、レーザ光を照射してデータの記録・再生を行う。記憶容量は2〜4メガバイトあり、磯気カード(72バイト)の3万倍以上、ICカード(8キロバイト)の300倍以上と大きい。磁気カードは磁石や電気機械などに近付けると記録データが失われ、ICカードはX線や静電気や折り曲げに弱い等の欠点があるが、光カードにはこれらの問題はなく、価格も普及すれば1枚500円以下で、ICカードの数分の一と見込まれる。また、光カードは磁気カードなど他のカードと共に財布に入れたり、ハンドバッグに入れたりして意識せずに持ち歩くことができ、光ディスクやフロッピーディスクなどと比べると携帯性の面で優れている。
 光カードはこのような特長から、医療分野や金融、流通、サービス関係、機器の保守等への応用が考えられるが、特に医療分野への適用については有用性が高く、わが国をはじめ諸外国でも他分野に先行して実用化へ向けての研究が進められている。
 本文では、(株)日本コンラックス社のリーダ・ライタの規格、性能、対応する光カードの規格等について解説し、医療用光カードおよびリーダー・ライタの規格統一に対する見解を述べることとする。

2.光カードの規格

 光カードには大別して再生専用型(ROM型)、追記型(WORM型: Write Once Read Many)があり、将来は書き換え型(Rewritable 型)が開発されると思われる。
 現在、医療用として実用化が進められているのは追記型で、データの記録は一度だけ、再生は多数回可能で、未記録部にデータが追記出来るものである。
 この光カードにデータを記録する場合のフォーマットには大別して3つの標準(案)がある。表1にこれら標準(案)の概要を示す。なお、ANSCはアメリカにおける標準化機構でメンバーには11社が参加しており、DELA(Drexler European Licensees Association )はブリティッシュ・テレコム、オリベッティほかヨーロッパにおけるコンピュータや印刷関連の企業5社で構成される機構である。これら二者のフォーマットは、ほぼ同様なので表1では同一欄にまとめてある。DELAと日本L型はピット記録様式、変復調方式、エラー訂正方式等が異なる。

表1 標準(案)の概要

 DELA規格では、エラー訂正符号を日本の文字放送と同じ(272,190)符号とし、ランダムエラーに加えてバーストエラーにも対処できるインタリーブ配列を採用している。また、正逆どちらからの再生も可能にし、再生スピードを上げている。
 トラックフォーマットを図1に示す。1トラックはブロックタイミングをとるためのフレーミングコード、ビット同期のためのリードイン、アドレス情報のためのBOS、データ記録の為のセクタおよび逆再生の為のリードインで構成されている。各セクタの最後の部分には次のセクタのためのBOSも含まれているので、傷等でBOSが読み取れないときも他のBOSを利用してデータが再生できる。

図1 DELA規格のトラック構成

 ユーザべースであるセクタ部分はフリーセクタサイズとすることにより、記録効率の向上を図っている。また、セクタ間にはギャップを設けず、データ信号位相の連続性を保つようにして、フレーミングコート信号の識別確度を高めている。

3.リーダ・ライターの概要

 リーダ・ライターはレーザ光スポットを光カードに照射してデータの記録・再生を行う光ヘッド部、カードの引き込み・排出物、カードの往復運動機構部、光ヘッドの各トラックヘの送りやランダムアクセスを行うための光ヘッド送り機構部、フォーカシングおよびトラッキング制御部、エラー検知・訂正部、ホストコンピュータとのインタフェース部等の各部から構成されている。
 光ヘッドは図2に一例を示すように半導体レーザを始めとして各種レンズやプリズム類、回折格子、フォトダイオード等からなる光学系、フォーカシングやトラッキングを行うために集束レンズを2次元に動かすための駆動系から構成されている。
 光カードヘのデータの記録・再生は、半導体レーザから放射されるレーザ光を集束レンズで例えば直径2.5μmのレーザ光スポットに絞り、このレーザ光スポットを長辺方向すなわちトラック方向に機械的に往復運動させた光カードに照射して行う。

図2 光ヘッドの構成例

4.LC 304型リーダ・ライタ

 (株)日本コンラックス社のLC−304型リーダ・ライタの規格概要を表2に示す。DELA対応機種であり、使用する光カードの記録部は図3に示すようにデータスポットサイズ(ピットサイズ)2.5μm、データピッチ5μm、トラックピッチ12μm、ガイドトラック幅2.5μmとなっている。
 記録・再生スピードは表2に示すごとくともに160Kビット/秒,隣接トラックヘのアクセス時間は全幅O.3秒、隣接トラック5mm秒と、高性能であることが特徴である。

表2 LC-304型リーダ・ライタ(日本コンラックス社製)の規格概要


図3 光カードの記録部拡大図

5.リーダ・ライタの規格

 リーダ・ライタの規格の多くは、光カードの規格に依存する。医療関係ですでに世界各国で実施されてきた導入試験では、ほとんどの場合ドレクスラ社の光カードが使用されており、期待された成果をあげつつある。また、ドレクスラ社のものとコンパチブルな光カードは、国内数社でほぼ開発が完了している。
 このような現状から勘案すると、医療用光カードとしては利用上の点からも、実用時期の点からもドレクスラタイプのものを採用するのが最適と考えられる。
 ドレクスラタイプにはDELAとL型があるが、前述した変調方式やエラー訂正方式における利点、諸外国も含めた現在までの実績等から見ても、DELA規格で進めるのが最適と考える。
 DELA規格に従うとすれば、それなりにリーダ・ライタの規格の大半は決まるが、リーダ・ライタ独自で決められる規格も多少はある。記録・再生スピード、アクセス時間、インタフェース等である。
 記録・再生スピードは速ければ速いほど、アクセス時間は短ければ短いほどよいという類いのものであり、これらは技術的な実現性によって決まるものである。
 現状および近い将来を見通した場合、これらは以下の値が妥当ではないかと思考する。
  記録スピード  160Kビット/秒
  再生スピード  160Kビット/秒
  アクセス時間  0.2秒(全幅)
          5ミリ秒(隣接トラック)
 また、インターフェース可能なコンピュータとしては、最もポピュラなタイプであるPC−98およびその互換機とし、他機種については状況により処理すればよい。

6.むすび

 光カードが世の中に普及、利用されるためには規格統一が不可欠であることはいうまでもない。光カードの規格には複数の案があるが、DELA規格が最良であると述べた。
 リード・ライト・デバイスすなわちリーダ・ライタの規格は、光カードの規格に依存するが、記録・再生スピード、アクセス時間等は、リーダ・ライタ独自で決められ、これらが性能を表す要因ともなる。これらについて日本コンラックス社としての見解を示した。ご批判、ご教示を賜れば幸いである。

参考文献
1)医療用光カード国際セミナ<TEXT>28. Oct.(1989)
2)光ハンディメモリの標準化に関する研究調査 光産業技術振興協会 平成2年3月
3)椎名晋一:医療用レーザーカード、臨床検査、33. 1(1989)


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