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第5回日本光カード医学会論文集、17-18、1994年

[一般演題1]

献血における光カードの応用 Part II

○田村弘侯.関口定美 北海道赤十字血液センター
東福寺幾夫 オリンパス光学工業(株)

はじめに

 血液センターの使命は、輪血を必要とする患者に安全な血液製剤を提供することにある。
 そのためには、安全な血液を安定的に必要量を確保することが重要であり、また常に過誤防止の対策が血液センタ一の業務全体にわたっていなければならず、このため業務の自動化と電算化に力がそそがれている。1)
 特に血液の安全性は、安全な献血者からスタートすることから、献血の都度行われる血液の各種検査の成績は重要であり、またこの成績を献血者自身の健康管理に利用出来ることから、その蓄積を光カードによって行うことが可能であれば、血液の安全性、献血者の健康管理、両方に有益なことである。
 今回は、「献血における光カードの応用Part II」として実験的に試みている我々の経験を紹介する。

I.目 的

 血液の安全と献血者の健康管理に活用するため、そこに記録可能な献血者のデータをどのように提供・活用すべきかについて、実験・評価を行うこととした。
 この事に着目したのは、第1は血液センターが持つ献血者に関する総ゆるデータは、本来献血者自身のものであり何らかの方法をもって本人に戻すべきと考えたこと。
 第2は、献血者は成分献血の導入以来、頻回献血を行ういわゆるrepeat donorが多くなり、献血を受ける血液センター側もこれらのdonorを安全な血液提供者として期待すると共に、そのデータは有効に活用されるべきであること。2)
 具体的には、随時蓄積する献血者の各種個人データは献血者自身の健康管理に利用出来るばかりでなく、血液センターは献血方法、献血に用いる機械の選択等にも利用することが出来、この接点を結ぶものとしてカードシステムを考えた。

II.方 法

 本実験の研究目的を達成するための方法として、次の3つのフェーズを想定した。

フェーズ0  (1991年11月〜1992年4月)
血液センターに限定した職員を対象とする小規模による定性的実験
フェーズ1  (1993年3月〜1994年6月)
母体・献血ルーム等の固定施設で成分献血者(モニター)を対象とする拡大規模による定量的実験
フェーズ2  (時期未定)
移動献血車等にまで拡大した広域での運用実験
 フェーズ0、同1(第1次アンケート調査)については、既に第3回・第4回の本総会で次のように報告した。

(1)フェーズ0

 北海道センター職員63名がカードモニターになり、アンケート調査を行い、次の結論を得た。

  1. 本人のデータに関心が高まったこと
  2. 献血の意識が向上し、献血回数が増加したこと
  3. 献血者へのサービスについて、職員の意識が高まったこと

(2)フェーズ1

 カードモニター(献血回数30回以上のrepeat donor)を対象に血液センターにおける光カードの使用状況と端末機の操作性や各種情報の内容に関するアンケートを行い、献血者の問題意識を調査したが、フェーズ0同様強い関心と利用推進の希望が寄せられた。3)

III.今回の実験拮果

 上記IIの結果をふまえ、システムをより良く改善するための基礎として、第2次および第2次アンケート調査を進めた。

1.第2次アンケート調査(1994年1月〜1994年3月)

 カード保有者829名中、548名(66.1%)より次の回答を得た。

(1)システムの利用状況

 利用は326名(59.5%)、非利用は222名(40.5%)であり、非利用の内訳は献血をしていない55名、時問がない116名、操作方法が分からない6名であった。

(2)メニューの利用状況

 利用したことのないメニューの順位は次のとおりであり若者向けのクイズは意外に少なく、本人の健康に関連する事項に関心の高いことが分かった。

  1. クイズ           188名(28%)
  2. 次回献血可能日       179名(27%)
  3. 血液センターからのお知らせ 129名(20%)
  4. 健康管理コーナー      123名(18%)
  5. 献血記録コーナー       53名( 7%)

(3)新規メニューの利用状況

 新規メニューの利用は43%で、大半の利用者は内容が詳しくなったため、健康管理の参考になるとの回答を寄せた。非利用者は、知らなかった55%、時間がない34%、その他11%であった。

(4)システムの評価及び改善要望事項

 システム全般の評価としては、概ね良い(グラフ印刷が出来る、過去の検査拮果が一目で分かる等)との回答であるが、画面選択に時問がかかる、声のメッセージは不要、との意見もあり、改善要望としては次の項目を揚げた。

  1. 食事の参考表と個人データの比較
  2. 献血時にデータが見たい
  3. 血圧、γ−GTP、中性脂肪、血糖値項目の追加
  4. 手近かで目立つ場所へのサービス端末機の設置
  5. 他の血液センターでの献血データの入力

2.第3次アンケート調査(1994年7月〜1994年8月)

 現在、次の項目についてアンケート調査を進めている。

  1. サービス端末機の利用状況(回数、施設別)
  2. 献血カードのデザイン、表示内容、保管方法
  3. 献血時における医師からのアドバイス
  4. 他機関で実施した検査データの入力と活用

IV.考 察

 献血は輪血医療のためにあり、その献血は需要に見合った受け入れを行うべきである。輪血は安全性が求められるが、それを具体的に進めるには

  1. エイズ検査目的の献血排除
  2. HB、HCキャリア及びGPT高値異常者等の献血辞退
  3. 輪血歴のある献血者の献血辞退
  4. 成分献血、400ml献血の推進

等が考えられ、これらはいづれも献血者のよく献血の目的を理解した「責任ある献血」に繁がるものである。

 また、医療機関における輪血は、赤血球製剤の需要減、血小板製剤の需要増という変化が生じており、血液センターとしては、前者についてはoccasional donorを中心とした移勧献血車での献血(各市町村)、後者については固定施設でのrepeat donorによる献血(都市集中型)、として献血の推進を図っている。

 これらのことから、光カードの利用は、健康なdonorによる安全な血液の確保をもたらすということ、公平性の確保からもその活用価値は高いものと考える。

V.結 論

 以上の結果・経過により、血液センター・献血ルーム等の固定施設におけるカードの利用は、ほぼ目処が立ったと言える。今後は当初計画のフェーズ2(広域での運用実験)の他、アンケート調査によりモニターから出された要望事項のシステムヘの組み入れ、システムの改善等について検討を行う予定である。

 また、この光カードが医療機関または健康管理センター等においての併用が可能となるならば、国民一人一人が自分の健康状態のデータを自分で持つことになり、ひいては重複検査の排除、医療費の負担軽減にもつながる等の効果も期待されている。4)

 従って、今後は多くの方のご理解を得て、《献血を通じてつくる理想の一生》という大きな目標をかかげ、献血手帳の健康カード化の確立を目指したいと考えている。

文 献

1)関口定美、木本知子:血液センターにおける電算化、日本輪血学会雑誌.第35巻第5号.

2)関口定美監訳:輸血学における研究の展望−アメリカ血液銀行協会シンクタンクからの報告−、北海道赤十字血液センター、1991年.

3)関口定美、田村弘侯:光カードシステムによる献血者の管理、臨床検査.第37巻第6号.

4)健やかな長寿社会を実現するセルフケアインフォメーションシステム(SIS)の研究会、1994年8月発行予定.


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