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第6回日本光カード医学会論文集、11-12、1995年

[特別講演]

医療情報の源点より考える

大島正光
健康科学研究所

 医療情報システムという名の課題が長い間進められてきているが、今医療情報という源点から医療情報システムを考えてみることとしたい。医療の世界においてもいろいろのキャッチフレーズが生じてさているが、その中で「患者 orientedに」あるいは「患者の立場に立っての医療」というキャッチフレーズがある。あるいは「Informed Concent」というキャッチフレーズもある。「医療を供給する立場と医療をうける立場」という考え方もある。この対応を考えた場合に「患者の情報」ということを考えてみると、患者の情報の中には 'Identification' に属する情報もあるし、検査結果の情報、生活情報、薬剤情報など個入のすべての情報が時系列的に整理されている個人情報があるとすれば、健康管理もそして医療処理もスマートに出来るようになるのではなかろうか。この個人情報をどのように体系化をはかるかの問題もあるが、医療情報のシステム化については種々の条件を考えてゆく必要がある。
 すなわち
A.種々のCareをどのようにSystem化するか。
Careについてはつぎのようなものがあげられる。
Primary Care, Home Care, Remote Care, Nursing Care, Terminal Care(Hospice), Regional Care (R. C. Support System), Health Care, Medical Care, Self Care(Self Care Support System), Mobil Health Care, Environmental Care, Foster Care,Silver Care, Automobile Care, Emergency Care, Comprehensive Careなどがあげられる。
 これら多くのCareは夫々別個にあってよいものかそれともSystem化をはかってゆくべきかどうかを考えた場合にやはり後者の方を取るべきである。
B.さらに医療機関の施設を考えてみると、図1のように数多くのものがある。Careとこれらの施設との関連を考えながらSystem化をはかってゆくべきことも当然のことがらである。

図1 医療に関する機関

C.最近総合化ということがいわれている。
総合化というのは只単に医療の中のSystem化だけではなく、保健と医療と福祉とを横につなげてTotal 化をはかるべきであるということである。この保健・医療・福祉の中に含まれるべきものとしては図2に示すようなものが含まれており、これらを統合化する事が必要となってくる。このSystemの目標とすべきことは図3に示すような条件であるが、将来展望としてあげた表1に少しく説明を加えておくことにする。

図2 保健・医療・福祉情報システム


図3 保健・医療・福祉情報システムの目標


表1 医療情報システムの将来展望
  1. メディカルケアから広義のヘルスケアヘ
    ある人の一生を時系列的にみていき医療と生活処方とを結合させるシステムづくりをする。
  2. Multicareへの対応を
    Primary Care.Terminal Care,Home Care.Day Care.shortstay Care.Nursing Careなど多面的なケアに対応するシステムづくりをする。
  3. 医療・保健・福祉の統合化をはかるシステムづくりをする。
  4. 住民への健康教育によりセルフケアのノウハウを知らせる。
  5. 住民へのサービスと医療関係者へのサービスとのバランスをはかる。
  6. トータル・システムの構案をめざす。
  7. わが国で劣っている情報サービスの推進をはかる。
  8. 医療衛星システムの構築を進める。
  9. 機能分担、階層性、チーム診療、グループ診療などを医療情報システムの側から支援するシステムをつくる。
  10. 病院内情報システムと病院間情報システムとの斉合性をはかる。
  11. ニューメディアを積極的に医療の世界へ活用する。
  12. 規格の統一をはかる。
  13. Hospital Automationをはかる。

  1. 集団的な見方も大切であるが、一人の人間がどのように変化をしていっているかという見方も大切なことである。その点からいうと、医療と日々のセルフ・ケアの部分との結合が必要である。個人にとっては、とくにこの見方が重要なこととなる。
  2. 今、ケアと名のつく言葉をあげると10近くをあげることができる。これらのすべてのケアに対応できるシステムが望まれている。
  3. 総合的なシステムとして保健・医療・福祉情報システムヘの期待も大きい。これからはトータル・システムヘの期待も増大している。
  4. 一生のなかで、医療にかかわる部分よりも長いセルフ・ケアの期問があるわけで、その点ではもっとセルブケアに重点をおくべきではないかと考える。
  5. バランスとしては、住民へのサービスと医療関係者へのサービスのバランスが大切である。
  6. トータル・システム化を狙っていくことは、時代の趨勢として考えていく必要がある。
  7. 情報サービスは世界でも日本は遅れている部分であり、日本のなかでその分野を考えると、医学の分野はそのなかでも遅れている分野である。
  8. 広くネットワークがつくれる点で3,600km上空における通信衛星は、きわめて有力なものである。
  9. 医療情報システムヘの期待は種々の面で大きくなっている。
  10. 病院内情報システムからの発展としては、病院と病院を結ぶ病院間情報システムヘど進んでいくことになり、この両者が斉合性のあるものとならなければならない。
  11. ニューメディアは情報のシステム化の面で活用されている。
  12. 規格を一致させることは、きわめて重要なことである。
  13. 病院の自動化はその余裕を必要なところにふり向ける可能性を広げるものである。
 そしてさらにtotal化をはかる場合の条件をあげておくこととする。(表2)

表2 トータルシステムを考えるときの条件
  1. 必要なItemが全部あげられていること
    1. 連統性(胎児→乳児→…)
    2. 自然的区分(大→中→小)
    3. 対立的概念(真中型一分散型)
    4. キーワードを拾うこと(文献よリ)
  2. Needs,Demandsが満足されていること
  3. サブシステム間の共通する点と共通しない点とをはっきりさせること(混合か融合か)
  4. 図演的,シミュレーション的手法により足りない点を追加すること
  5. システムとして当然付属させるぺきものをリストアップしておくこと
  6. 優先順序を考えること(場合によっては取捨選択)
  7. 未来予測によりでてきたItemを考慮すること
  8. 技術の進歩に対応させること

 以上のように医療情報の中の個人の時系列的情報を中心として、どのようにsystem化をはかってゆくべきかが考え方の基本になければならないことを最後に述べておくこととする。


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