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第8回日本光カード医学会論文集、15-20、1997年

[一般演題1]

献血における光カードの応用:第5報

○田村弘侯、関口定美 北海道赤十字血液センター
東福寺幾夫 オリンパス光学工業(株)

I.研究の目的

 献血は輸血を必要とする患者のために自分の血液を無償で提供するボランティア行為である。その血液の提供は、献血者本人の健康に何らかの障害にならないことと、提供される血液が輸血を受ける患者にとっても安全であることが必要である。1)2)
 我々は、献血者サービスと安全な輸血用血液の提供に寄与するため、現在の機能的役割をもたない献血手帳を光カードに切り換え、そこに記録可能な献血者データをどのように活用すべきかについて、研究を行ったので報告する。

II.研究の方法

 本実験の研究目的を達成するため、次の3つの研究計画を設定してきた。
[1]フェーズ0(1991年11月〜1992年4月)
       小規模による定性的実験
[2]フェーズ1(1993年3月〜1994年9月)
       拡大規模による定量的実験
[3]フェーズ2(1995年2月〜現在)
       広域での運用実験
 フェーズ0・1の結果、及びフェーズ2の進め方については、すでに前回までの本学会において報告した。3)
 今回はフェーズ2の検討状況について報告する。

III.システムの概要

1.全体構成図
 光カードは、献血手帳の代替、安全な献血者確保の他、献血者本人に情報を還元し健康管理に利用願うものであり、また医療機関とのデータの共同利用を可能とするものである。
 その光カードの利用は、血液センター・献血ルームの固定施設と移動献血車及び出張採血の何れであっても、同一のサービスを可能とするため、統一システムの導入を機に受付システムを加え、有機的関連を持たせた.図1)

図1

2.光カードの発行
 光カードは献血者全員に配付することを前提にし、その発行は献血の受付場所で行い、次の運用によることとした。図2)

図2

[1]新規献血者への発行
 献血者コードの採番、カード光記録部に献血者コード、氏名、顔写真等の個人情報を書き込み、またリライト表示部に氏名、献血者コード、献血履歴、次回献血可能日等の印字を行い、献血終了時に手渡す。
[2]献血実績のある献血者への発行
 カード光記録部に受付システムの献血データを書き込み、リライト表示部には上記[1]と同様の内容を印字することにより、献血終了時に手渡す。

IV.各システムの内容

 当カードシステムは献血受付(顔写真含む)、検診医、及びサービスの3システムによる構成とした。

1.献血受付システム
 献血の各受入施設では、サーバーを介してダウンロードされたパソコンを用いて献血申込書の出力、献血者データの照会、入力を行うもので、その利用方法は次のとおりとした。図3)

図3

[1]光カードの提示・本人確認
 献血希望者には受付時に光カードの提示を願うが初回の場合は、本人確認の必要性を説明後、デジタルカメラで写真撮影を行い検診に進み、また再来でカード不携帯の場合は、受付システムを基にして本人確認を行う。
[2]献血申込書発行
 光カードから読み出した個人情報や献血履歴情報とするものである。
 その光カードの利用は、血液センター・献血ルームの固定施設と移動献血車及び出張採血の何れであって
 を利用して、年間献血量制限のチェックを行うと共に、献血申込書の自動印刷を行う。
[3]リライト印字
 今回の献血結果をもとに次回献血可能日の計算を行い、リライト媒体に印字を行う。

2.検診医システム
 各献血現場において、担当医師がパソコンを用いて献血者個人のデータをもとに助言・指導を行うものでその利用方法は次のとおりである。図4)

図4

[1]検診の支援
 検診の際に、献血カードに記録された個人情報、過去の献血履歴、問診結果、血液検査結果を参照することで、より的確な献血可否の判定を可能とする
[2]検診結果の記録
 検診時の血圧、体重、血液比重等の検診データ、献血方法の変更があった場合や献血中止と判定された場合、それらの情報を献血カードに書き込み、併せてリライト表示を行う。

3.サービスシステム
 血液センターや献血ルームの固定施設中ロビーにサービスシステムを設置することで、献血者が自分自身の健康管理等のためにカードに記録されたデータを次の事項を配慮した画面表示・印刷が出来るものとした。図5)

図5

[1]不正使用の防止
 他人のカードの不正使用を防止するため、暗証番号を用いて本人確認を行う。
[2]マルチメディア機能の活用
 サービスシステムに画像や音声を含むマルチメディア機能を搭載。
[3]血液センターや血液事業に関する情報提供による啓蒙活動の支援を可能とする。
[4]献血の予約受付を可能とする。

V.移動献血車による試行実験

1.目的及び対象施設
 移動献血車における光カードの利用については、カードの運用方法(作業の効率性)、並びにカードの持参率の調査が必要である。その協力地域として、千歳市の4施設(モニター500名を予定)を選定し、平成9年8月より平成10年3月迄の間、上記III及びIVの内容により実施することとした。

2.試行実験の経過
 平成9年8月末現在、2施設においてモニター100名に光カードを発行し、カードヘの書込み、リライト表示には1人3分要したが、受付業務自体には支障はなく、概ね好評であった。
 しかし、写真撮影に約3分要することと、サービス端末機を如何に利用願うかが課題である。図6)

図6

VI.考察

 昨今の血液事業を取り巻く環境は大きく変化し以前にも増して安全な血液の確保と国内自給が望まれている。4)
 我々の光カードの実験研究は、安全な献血者確保に主眼をおいた場合においても、次の理由から、安全な血液確保のためには極めて有用であると考える。

[1]献血者本人の確認が出来ること
 光カードに内蔵された顔写真は、偽名献血や他人名義の献血を防止し、責任ある献血を実現することが出来る。
[2]献血者の献血履歴が正確に把握出来ること
 流動する献血者に対応し、未実施血液センターでの献血も、光カードにより履歴情報が把握出来る。
[3]精度の高い問診が実現出来ること
 問診時に、献血や問診、検査等の情報を参照することで正直な回答が引き出せる。
[4]検査履歴情報を多目的に活用することが出来ること
 蓄積された検査履歴情報を献血可否の判断や献血者の健康管理の指導に活用出来る。

VII.今後の課題

 フェーズ2で課題としていた移動献血車での運用は今回の試行実験でほぼ目処がついた。
 今後は、血液センター間における献血者のカード利用と他医療施設とのデータの相互利用である。5)
 前者は、北海道ブロック内においてオンライン化処理による献血者情報の一元管理を実施するため、その中での運用を予定しており、後者は、医療機関または健康管理センター等とのデータ交換は、カード媒体使用機器(R/W)、機密保持、費用負担等、様々な問題が所在するため、その実現を目指し検討を継続することとしている。6)7)

文献

1)
関口定美、木本知子:血液センターにおける電算化、日本輪血学会雑誌.第35巻第5号.
2)
関口定美監訳:輸血学における研究の展望−アメリカ血液銀行協会シンクタンクからの報告一北海道赤十字血液センター、1991年.
3)
関口定美、田村弘侯:光カードシステムによる献血者の管理、臨床検査.第37巻第6号.
4)
厚生省医薬安全局血液対策課:「血液事業の在り方について」、1997年
5)
関口定美:献血者の健康チェックと光カードの可能性、月刊ばんぶう.1995年1月号
6)
関口定美他:健やかな長寿社会を実現するセルフインフォメーションシステム(SIS)の研究会 1995年3月
7)
関口定美:生涯健康管理を考えるフォーラム「生涯健康管理、光カードの可能性」1995年2月

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