第8回日本光カード医学会論文集、21-22、1997年 [一般演題2]
日母光カード標準データフォーマットに準拠した妊婦管理システムの互換性の検討
○原量宏、秋山正史、柳原敏宏、神保利春 香川医科大学母子科学教室 山田直樹 オリンパス光学工業株式会社SI事業推進部
1.はじめに光カードは、記録容量、記録の永続性、携帯性に優れ、医療情報の記録媒体として最も適した特性を備えており、日本母性保護産婦人科医会情報処理検討委員会においては、光カードの”母子健康カード”としての普及を目的として、平成7年度に”日母光カード標準データフォーマット”を制定公表し、その普及に努めている。本研究の目的は日母光カード標準データフォーマットに準拠した周産期管理用ソフトの開発、および複数の光カードシステムのハード、ソフト両面における互換性を確認することにある。
2.システム概要
2.1 光カードシステム
現在当科外来で使用している光カードシステムを示す(図1)。開発した光カードシステムは、パーソナルコンピューター及び光カードリーダーライターより成る。パーソナルコンピューターはNECのPC9821・ValueStar13を使用、光カードリーダーライターはキャノン社製、SIOC形式対応のものである。OSにWindows95を使用し、Windows95上で動作する異なる2種類の周産期管理用ソフトが稼働している。また、外来では患者への説明を考慮してプリンターも接続している。
図1 光カードシステム 本体上部にある小型の装置が光カードリーダー/ライター
2.2 ソフトウエア
2種類の周産期管理用ソフトの構成は両者ともほぼ同様で、初診時に妊婦基本情報が記録され、次回より来院ごとに、妊娠週数、体重、血圧、子宮底長、腹囲、尿蛋白、尿糖、浮腫、CRL、BPD、FL、胎向、子宮収縮、出血、胎盤付着部など約30項目が、標準データフォーマットに準拠し記録される様になっている。入力終了後には、妊婦の体重、子宮底長、胎児のBPD、FL、その他の増加曲線を直ちにグラフィック表示することも可能である。図2はオリンパス仕様の周産期管理用ソフトで、入力したデータを患者情報画面に一覧表示したところである。このソフトでは基本項目データはダブルクリックによりグラフ表示する事が可能である。例として母体血圧のグラフ表示を示す(図3)。血圧の値が折れ線グラフで表されその推移が容易に理解される。また、浮腫、尿蛋白、尿糖の程度も同時に表示され、妊娠中毒症の早期発見、管理、患者への説明を容易にした。
図2 オリンパス仕様周産期管理用ソフト
患者情報一覧表示画面
図3 血圧グラフ表示(オリンパス仕様)
図4はトーイツ・ダイヘンテック仕様の周産期管理用ソフトの定期検診入力画面である。先に示したオリンパス仕様のソフトと外見上の違いはあるが、妊娠週数、体重、血圧、など約30項目の基本入力項目は共通である。標準データフォーマットに準拠し光カードに記録される様になっており、互換性が保たれている。また、両ソフトウェアともハードディスクに入力データのback up fileを作る構造になっている。
図4 トーイツ・ダイヘンテック仕様
周産期管理用ソフト定期検診入力画面
2.3 研究開発企業
現在の日母光カード標準データフォーマットに準拠した妊婦管理システムを、研究開発している企業を表1に示す。光カード及び光カードリーダーライターに関してはオリンパス、キャノン、光カードリーダーライタードライバソフトを含めた周産期管理ソフトはオリンパス及びトーイツ・ダイヘンテックが取り組んでいる。現在のところ周産期管理ソフトはWindows95、3.1に対応している。
表1 研究開発企業 メーカー 光カード
(SIOC形式)オリンパス キャノン リーダー・ライター オリンパス キャノン ソフト
(Windows95,3.1対応)オリンパス トーイツ・ダイヘンテック 2.4 光カード、光カードリーダーライター
光カードリーダーライターを示す(図5)。右がキャノン製、左がオリンパス製である。サイズは縦横高さがそれぞれ6×14×25cm、9×23×25cmでともにコンピュータ本体とはSCSIにて接続される。
図6は当科で使用している光カードである。左がキャノン製、右がオリンパス製、カードサイズはキャッシュカードサイズで共にSlOC形式に対応している。
図5 光カードリーダー/ライター 右がキャノン製、左がオリンパス製
図6 当科で使用している光カード 左がキャノン製、右がオリンパス製
2.5 互換性
同一妊婦胎児のBPD,FLの成長曲線を図7に示す。上のグラフがオリンパス製光カードに、同社製光カードリーダーライターで書き込んだデータをキャノン製光カードリーダーライターでトーイツダイヘンテック製ソフトで読み込んだもの、下のグラフが全く逆の組み合わせでデータを読み込みグラフを作成したものである。この様に全く問題なく動作する事が確認された。
図7 BPD,FLの成長曲線
3. 成績
妊婦65例に関して、2種類のソフト、光カードおよび光カードリーダーライターを用いて、相互にカードの読み書きが可能であるかどうかを検討した。その結果、複数のソフト相互の読み書きはもちろん、光カードリーダライターならびに光カードに関しても、どの様な組み合わせの場合でも、完全に相互に読み書き可能であることが確認された。また他院で記入されたカードの相互の読み込みに関しても、問題なく作動することが確認された。コンピュータ側からみると、光カードはフロッピーディスクと同様、メーカを選ばずどのような組み合わせでも利用可能になったわけであり、今後の医療カードの普及に役立つと考えられる。
”日母光カード標準データフォーマット”の制定により、光カードの互換性が実現したことは、母子健康カードの普及にとってはもちろん、他科領域においての医療用カードの実現にとっても非常に意義深いことと思われる。
(本研究は文部省科学研究費 NO.7671791,および日母おぎゃー献金研究助成費による)
文献 1. 原 量宏:光カードを用いた周産期管理のフィールドワーク.第5回光カード医学会論文集.19−20,1994
2. 原 量宏,秋山正史,柳原敏宏,神保利春:インターネットを用いた在宅ハイリスク妊婦管理システム.医用電子と生体工学,日本ME学会雑誌論文.34,1996