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第9回日本光カード医学会論文集、16-20、1998年

[一般演題2]

献血における光カードの応用:第6報

○田村弘侯、関口定美 北海道赤十字血液センター
東福寺幾夫 オリンパス販売(株)

I.研究の目的

 我々は、献血者サービスと安全な輸血用血液の提供に寄与するため、現在の機能的役割をもたない献血手帳を光カードに切り換え、記録可能な献血者データをどのように活用すべきかについて、過去7年間研究を行い、本学会でも5回にわたり報告をしてきた。
 今回は、さらに10月から北海道5血液センターにおいて一斉実施する内容について報告する。

II.システムの概要

1.全体構成
 光カードは、献血手帳の代替、安全な献血者確保、献血者本人に情報を還元し健康管理に寄与すること、そして他医療機関とのデータの共有化を可能とするものである。1)
 血液センターにおいては、光カードを献血のどの受入場所においても利用を可能とするため、全国的な血液センターの統一システム及びOCRシステムとの有機的関連を持たせ、システムの開発を行った。図1)

図1

2.光カードの仕様
 光カードは、次の仕様とした。図2)

図2

  1. データの記録は、国際規格のSIOC方式とした。
  2. データの容量は、3.4MBタイプとした。
  3. 光カードの裏面には、本人署名欄(サインパネル)とリライト表示領域を設けた。
  4. リライト媒体は、カードと一体媒体とした。
  5. リライト表示領域は、22文字×17行である。
  6. リライト表示情報は、献血の都度、表示内容を変更することとした。
  7. 光カード内に本人の顔写真を内蔵させた。
  8. 光カードのデザインは、モニターによるアンケート調査の結果を参考とした。

3.各システムの内容
 当システムは献血受付(顔写真含む)、検診医、及びサービスの3システムから構成されるものとした。
1)献血受付システム
 献血の受入現場においては、サーバーシステムを用いて献血申込書の出力、献血者データの照会・入力を行うと共に、献血カードの新規発行や履歴情報の記録等の各種処理を行う。
 又、受付時には、新規献血者並びに再撮影希望者に対しては写真撮影を行い、当該情報を光カードへ書き込む。図3)

図3

2)検診医システム
 検診業務においては、光カードリーダーライターリライト装置の接続されたノートパソコンを用いて献血者の過去のデータ(検診情報、生化学検査結果、免疫検査結果)を表示し、当日の献血可否判定のサポートを行う。図4)

図4

3)サービスシステム
 サービスシステムは、カードに書き込まれているデータを利用して、血液検査・生化学検査・血球計数検査の結果を時系列に表形式やグラフ形式で表示したり、血圧・肝機能等のデータから健康管理の情報やアドバイスを画面及びプリンターを用いて利用者(献血者)に提供する。図5)

図5

 なお、プライバシーの保護には、暗証番号を用いて本人の確認を行うこととした。

III.システム内容の検討(フェーズ2レベル)

1.フェーズ2レベル前半
  1. 光カード内に、生涯の献血履歴及び検査データを保有出来ることが確認出来た。
  2. 献血者へのデータ還元は、健康管理の一助として有用であり、モニター献血者に受け入れられた。
  3. 光カードの裏面にリライト印字機能を付加したことで献血手帳の代替えを可能とした。
  4. 全道サーバー及び車載パソコンと連動することにより、全ての受付場所において、献血者本人との照合確認作業がレベルアップした。
  5. 顔写真の撮影については、献血者の理解が得られると共に本人確認が飛躍的に向上した。
  6. 検診時のデータ活用など、関連システムへのデータ提供媒体として有用であることが確認出来た。

2.フェーズ2レベル後半
1)移動献血場所における光カードの利用形態

  1. 受付システム筐体のコンパクト化
  2. 受付システム筐体持運びの工夫
  3. 検診医システム筐体の軽量化
  4. 検診医システムへの血圧値自動入力
  5. サービスシステムの仕様変更
  6. ホームページのサービスシステムへの組入れ
  7. 受付専用車の整備 図6)

図6

2)光カードの新規発行

  1. 担当職員の教育・訓練

3)顔写真撮影業務の円滑化

  1. 忌避者のための仮画像方式の採用
  2. 顔写真撮影時間の短縮

IV.全道血液センター実施の方策

 広域での運用実験の最終段階として北海道ブロックの5つの血液センターにおいて次の内容により進めることとした。

  1. 各献血現場では、献血手帳と同様の考え方により光カードを発行する。
  2. 当面、北海道外在住者については光カードの配布は行わず、献血手帳での運用とする。
  3. 光カード不携帯の献血者については、仮カード(紙サ−マルカードで1回限り使用)での運用を行う。
  4. 受付システムにデータが無い場合は、光カードを基に献血申込書を発行する。
  5. 問診・検診時には、光カードを用いて献血者の健康管理の指導等を行う。
  6. 光カードの発行予定数は次のように見込んだ。
    区 分 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度
    受付者数 185,000 370,000 370,000 370,000 370,000
    発行数 新規 23,000 46,000 46,000 46,000 46,000
    再来 137,000 40,000 55,000 24,000 11,000
    160,000 86,000 101,000 70,000 57,000
    (算定基礎)新規枚数:献血者数の12.5%とした。
          再来枚数:献血者数の65.0%とした。

  7. 機器の配備計画は、次のようにした。
    区 分台数機器構成
    受付システム一式50ノートパソコン、プリンタ、光カードリーダ・ライタ、リライト印刷装置、デジタルカメラ
    検診システム一式25ノートパソコン、光カードリーダ・ライタ、リライト印刷装置
    サービスシステム一式25パソコン、光カードリーダ・ライタ、プリンタ、リライト印刷装置、ディスプレイ(タッチパネル付き)

V.今後の課題と結論

 前回迄に課題とした移動献血車での運用及び血液センター間における献血者のカード利用は今回の段階で解決することになる。従って残る課題は他医療施設とのデータの共有化である。2)
 データの共有化は、医療機関又は健康管理センター等におけるカード媒体、使用機器 R/W)、機密保持、費用負担等、様々な問題が所在するため、遅々として進んでいない。しかし、今回の広域での運用実験が進展すれば、その実現に向け積極的に進める予定である。3)4)
 なお、研究に関連するものとして、平成9年10月より開始された臓器移植ネットワークにおける意思カードの配布は、現時点では目的である臓器移植に達することは中々困難なようである。
 この事について既に北海道ブロック血液センターでは、献血者への意思カードの配布を行なっているが、本年10月より光カードの使用を開始することから、これに臓器移植意志カードと関連させて、両者に新たな付加価値を付けることは、献血で得られたデータが臓器移植の意思と共に新しい医療の発展に生かすことができるであろう。

文献

1)
関口定美、田村弘侯:光カードシステムによる献血者の管理、臨床検査.第37巻第6号.
2)
関口定美:献血者の健康チェックと光カードの可能性、月刊ばんぶう.1995年1月号
3)
関口定美他:健やかな長寿社会を実現するセルフインフォメーションシステム(SIS)の研究 1995年2月
4)
関口定美:生涯健康管理を考えるフォーラム「生涯健康管理、光カードの可能性」1995年3月

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