第9回日本光カード医学会論文集、25、1998年 [パルディスカッション2]
プライマリケアと光カード
○田代祐基 熊本県医師会・診療システム研究フォーラム 原 寿夫 郡山医師会・診療システム研究フォーラム 大島譲二 熊谷市医師会・診療システム研究フォーラム 遠藤郁夫 小田原医師会・診療システム研究フォーラム 白男川史朗 診療システム研究フォーラム 平井 浩 診療システム研究フォーラム 芦刈 明 愛知県歯科医師会・診療システム研究フォーラム 坂井 譲 岐阜県歯科医師会・診療システム研究フォーラム 飯島康典 日本薬剤師会・診療システム研究フォーラム 大櫛陽一 東海大学医学部・診療システム研究フォーラム
[はじめに]
診療システム研究フォーラムは、光カード利用による患者本位の医療・福祉・保健体系の確立と情報の共有化を目指し、1996年6月に1都5県の医師会有志の先生方により結成された。現在では、歯科医師会、薬剤師会の先生方が参加され、2000年からスタートする介護保険の導入や健康保険証のカード化、医療関連施設との連携などを見据えた医療・福祉・保健システムの研究開発を行っている。
今回は、21世紀のプライマリ・ケアを形成するために重要な役割を果たす光カードを中心に研究成果を報告する。[目 的]
我が国では、体内に生命が宿り乳幼児に至るまでを厚生省が、学童・生徒期は文部省、成人は労働省、老いると厚生省と縦割り行政管轄になっており、人の一生の健康情報が一元管理されていないのが現状である。
私たちは、この現状を打開し、小子高齢化時代の介護保険を見据えた健康投資として新たな社会保障体系を形成するためには医療・福祉・保健情報の共有化が必要と考え、そのツールとして最適な「光カード」を利用したオフライン・ネットワークシステムの研究開発に着手した。
[研究テーマ]
光カードを利用したシステム開発は以下の通りである。
- 診療所向け診療支援システム(電子カルテ、オーダリング)開発
- 病院向け診療支援システム(電子カルテ、オーダリング)開発
- OTCを含めた薬剤管理システム開発
- 健康管理システム(医科、歯科)開発
- 在宅・介護支援システム開発
- 光カード記述方式標準化と連携システム開発
- 医療・福祉・保健情報の提供
(カルテ開示、レセプト開示、インフォームドコンセント)[現状報告]
私たちは、まず始めに全国89,000施設ある診療所向け診療支援システム開発を行い、50医療機関でフィールドテストを実施した。
システム機能および特徴は次の通りである。また、厚生省GISモデル事業の一環として大分県津久見市で医療と福祉の連携システムを開発し、本年8月より本格稼働させた。
- パソコンに不慣れ、年配の医師(医師会平均年齢64歳)のためタッチパネルを採用し、マニュアルも音声マニュアルとした。
- 医事会計システム(レセコン)と診療支援システムを院内LANで結び、双方向での情報交換を可能にした。
- 簡単な操作でインターネットや画像取り込みが出きる。
- 患者属性を始め、血液型、アレルギー、既往歴、家族歴、投薬、注射、検査、画像、傷病名を光カードに記述し、全国どこの医療機関でも医療情報の共通利用ができる。
- 医療情報の共通利用を可能にするためのコード、フォーマットの標準化を推進し、傷病名はICD10コード、投薬は厚生省コード、検査は臨床病理学会コードを使用した。
さらには、病院システム、保健システム、薬剤管理システム、歯科健診システム等の開発を、平成11年6月を目処に着手している。
尚、本研究成果は各種学会を通じて適宜発表している。[まとめ]
私たちは、健康情報カード(光カード)として国民一人一人が携帯し、医療・福祉・保健情報が共有化されてこそ、抜本的な社会保障体系の改革に繋がると確信している。