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第9回日本光カード医学会論文集、26-27、1998年

[パルディスカッション3]

在宅介護と光カード

原 寿夫
原内科医院・福島県医師会

1. 目的
 公的介護保険制度が、平成12年4月から始まる。この制度では、療養者とその家族の意思を反映し得る保健医療福祉の連携が求められ、机上の空論ではない、より実践的でより具体的な連携の方法を早急に確立することが必要である(図1参照)。その為には、地域で利用可能な各種サービスに関する情報がリアルタイムに提供され、利用者が自分で選択できる環境が基本的に必要であるが、加えて、療養者の個人情報を関係者が共有できる情報システムも必要である(図2参照)。この情報システムには、オンラインの部分とオフラインの部分と、どのように組み合わせてシステム化すべきか、検討すべき課題はいろいろあると思われるが、今回は光カードを用いたオフラインの活用について検討してみた。

図1

図2

2.方法
 光カードを用いた診療支援システムである光メディカードシステム(図3参照)を、平成9年度にモデル事業として、かかりつけ医にあたる当診療所と、当診療所で訪問診療を行っている在宅療養者が利用しているディサービスセンター、それにショートスティを行っている老人保健施設に設置した。この3施設を利用している在宅療養者に光カードを配布し、その利用の意味を考えた。光メディカードシステムは、医事会計システムと双方向性でデータの利用ができるもので、さらに、血液等の院外の検査センターに外注している検査データも、検査伝票の1日遅れではあるがFDで報告があり、このデータも加えて日常の診療で利用できる。診察所見や処方等の指示はタッチパネルで診療時に入力するが、どのデータも入力に関し二重手間がなく、効率のよい運用が可能となっている。また、訪問診療時の診察内容の入力や入力されている情報の参照はノートパソコンと光カードのR/Wを持参して行った。
 さらに、介護保険が導入されて6ヶ月以内の見直しを行っていくとされるモニタリングの過程での、光カードの活用を意識して光カードの流れや関係者の関わりも調査した。

図3

3.結果
 光カードに入力された情報の多くは医療機関からの検査情報と訪問診療時の血圧等の診察に関する情報であるが、ディサービスやショートスティ利用時の状況報告も少しではあったが入力された。こうした光カードに入力された情報は、各関係機関の光メディカードシステムで参照され、在宅療養の継続に活用された。

4.考察
 在宅療養の現場では、現在でも診療情報提供書や訪問看護指示書、その他いろいろなノートの活用によって関係者の連携を取りやすくする工夫がなされている。しかし、ともすると工夫すればするほど書類の山になってしまい、煩雑になるばかりかその為に多くの時間を割かなければならなくなってきて、本来の目的とは異なってきてしまっているのが現状である。
 今回の光カードの運用では、日常の診療でもデータの二重入力がなく効率的な運用が可能な光メディカードシステムを使うことによって、上記のような作業から開放され、かつこれまで以上に多くの情報を共有化でき、より質の高い保健医療福祉の連携が可能になるものと考えられた。この質を高めていく方法こそ、介護保険におけるモニタリング、つまり再アセスメントとケアプランの見直し作業において必要不可欠なことと言える(図4参照)。ただし、運用上の点から考えると、光カードの内容を参照できる手帳サイズくらいの機器の開発が望まれた。

図4

5.結論
 介護保険の継続的運用(図5参照)における、在宅療養者へのより質の高い、本人および家族の意思を尊重した保健医療福祉サービスの提供において、光カードおよび光メディカードシステムは有用であった。

図5

参考文献
[1] 光カードと電子カルテ:新医療No.276(1997年12月号)
[2] 保健・医療・福祉における情報機器の活用について:保健医療用光カード普及協議会(平成10年6月発行)


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