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第9回日本光カード医学会論文集、28-29、1998年

[パルディスカッション4]

光カードを利用した施設間連携における薬局の役割

○堀口雅巳、石倉千代治、石塚英夫 望星薬局
大櫛陽一 東海大学付属病院医療情報部
堀江政伸 伊勢原市医師会

はじめに

 伊勢原市では、1991年より「すこやかカード」(図1)と名づけられた、光カードを利用した「保険医療福祉サービス」を実施している。このシステムは、21施設間で利用でき、カード所有者は97年12月末現在2,495名になる。このカードには、(1)氏名、生年月日、住所、緊急連絡先などの個人基本情報、(2)血液型、薬物アレルギー、血清使用歴、輸血の可否、投薬の有無、主治医などの救急情報、(3)老人保健法に基づく基本健康審査、ガン検診などの結果、(4)一時入所、入浴サービス、配食サービスなどの福祉サービスの履歴、(5)訪問指導、訪問看護などの保健指導情報、(6)X線写真、内視鏡写真、心電図などの画像を中心とした医療情報、(7)投薬内容やコメントなどのフリーテキスト情報が記録できる。[1,2]
薬局での運用方法は、薬剤師用のセキュリティーカードを挿入し、パスワードを入力後、図2の「処理選択画面」が表示される。「連係情報」を選択後、患者の「すこやかカード」をセットすると図3の「フリーテキスト選択一覧画面」が表示され、投薬内容やコメントなどの情報を参照したり新規入力することが出来る(図4)。

図1

図2

図3

図4

I.目的

 日本における医療体制は、国民皆保険制度と医療機関へのフリーアクセスが大きなメリットとなっている。そのため、複数医療機関や複数診療科の受診が多いのが実態といえる。医薬分業のメリットのひとつとして、これら重複受診された場合の重複投薬や薬物相互作用を「かかりつけ薬局」でチェックすることが挙げられている。一方、診療報酬点数、調剤報酬点数や薬価の引き下げ等により、医薬分業が急速に進展してきた。そこで、「すこやかカード」を媒体として、病院、診療所、薬局の連携の中で、望星薬局で入力されている投薬内容の現状と問題点及び他施設間に医療情報の連携における薬局の役割について考察し報告する。

II.方法

 望星薬局で「すこやかカード」に、投薬歴を入力している患者の記録回数の現状を把握する。また、1998年4月から来局している患者から聞き取り調査を行なうか、後日電話調査を行ない、他医療機関受診の実態を調査する。

III.結果

 当薬局に来局する患者の投薬内容は、主に東海大学病院から発行された処方せんの投薬内容情報が記録されている。
 投薬内容の入力は、1995年6月から開始され、1998年12月までの間に患者数として159名、延べ投薬記録回数は1,181回を数える。これは、21施設の中で最も多い記録回数である。少ない月で28回、多い月で46回の記録を行った。1998年4月から8月までの3ヶ月間に96名が来局し、来局時の確認または電話連絡で確認のとれた69名中31名が他医療機関に受診していた。(老人保健法に基づく基本健康審査を含む)
 現在の方法は、フリーテキスト方式のため柔軟な対応が可能である。しかし、「処理選択画面」において、「連係情報」が入力されているか不明なため、他の施設において投薬内容やコメントを見過ごす可能性がある。また、「連携情報」が入力されていることが容易に判断できても、他施設からの投薬内容との間において、重複投与や薬物相互作用等のチェックを人的に行わなければならず、業務上の負担が問題となる。投薬医薬品に関してコード記載されていれば、コンピュータのアプリケーションで容易にチェックを行うことが可能である。[3]

IV.考察

 保険薬局においては、アメリカ最大のチェーン薬局「ウォールグリーン」のノウハウを利用し、伊藤忠商事が中心となって「RXネットワーク」を設立し運営を始めている。この「RXネットワーク」は、患者に非接触ICカードを持たせ、投薬内容管理等を行い、医薬品情報、マスターメンテを衛星通信、ISDN回線でサポートするネットワークとレセプトコンピュータが統合されたシステムである。
 現在、保険医療情報における標準化作業が進められているが、光カード、ICカード、これらを統合したハイブリッドカードや電子カルテを含めた記録方式、記録コードの統一化が早急にはかられ、何処においても利用者の有益性が確保されることが望ましい。 記録方式については、「診療システム研究フォーラム」や「保健医療用光カード普及協議会」がSGMLによる投薬内容の記録を実施しており、薬価収載品コードとテキストの記録が行われている。一方「電子カルテ」においては、SGMLのサブセットであるMedical Markup Languageを推進している。

V.結論

 薬局と他の医療機関との間で、患者に関わる情報を共有することは患者にとって有益と考えられる。しかし、「医療情報は誰のものか」という議論があるように、医療機関や薬局が暗黙のうちに情報交換をすることは患者のプライバシー保護の点で問題が残る。そこで、医療情報の共有により、どれだけ患者に利益をもたらすことが出来るかを十分に説明することが重要であり、また、患者の意志を反映させることは、責任が伴うことを十分に理解してもらう必要がある。
 薬局においては、患者毎にOTC販売歴や投薬された医薬品の内容および患者への服薬指導内容が各薬局独自で「薬歴」として管理されている。
 医療用医薬品のOTC化や医療機関への自由な受診および医薬分業の進展に伴い、患者の安全性や医薬品の適正使用のために、この「薬歴」を利用して「重複投与・相互作用防止」や「服薬情報提供」業務が行われている。これら薬局の所有する情報を他の医療機関と共有することにより、医師の処方設計や患者の服薬の継続叉は中断の参考とする等、保険医療機関と保険薬局の連携が行われれば、より良い薬物療法を行うことが可能と考える。

文 献

[1] Sakashita, Y. et al.: Health and welfare data on optical memory cards in Isehara city. Med. Inform.21(1)69-79.1996.
[2] Horie, M. et al.: Optical Memory Card for Community Health and Welfare in Isehara. Health Cards '95.IOS Press. 1995.
[3] 石倉千代治 他「相互作用の指摘されている処方調剤のための電算機による監査方式」,薬剤学,41(1)47-55.1981


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